和泉生コンクリート株式会社
代表取締役
雪本 清人
大学で探求した界面活性科学の知識を生かして大手化学メーカーで化粧品の開発に携わった後、いろいろな縁や人との出会いがあって当社の経営を担うことになった。順調な道を歩んでいた研究者が、いきなり経営者に変身したのである。その経営内容が厳しかったこともあって、畑違いの仕事に日々悪戦苦闘した。
しかし、若い頃から培ってきた研究者としてのDNAが消滅するはずもなく、ある時「生コン製造も界面活性科学である」と気づいた私は、水の研究に乗り出した。その過程で出会ったのがマイクロバブルである。その潜在能力を知るにつれて、目の前に大きな展望が開けた。まさに、「水を得た魚」であった。
研究を志す者は失敗や苦境を糧に進んでいく。そして、時として独自の発想で壁をブレークスルーし、社会を進化させ、人を幸せにする新しい技術を開発する。「水は方円の器にしたがう」という言葉どおり、斬新かつ適切な方法で扱えば、水は私たちに無限の恩恵をもたらしてくれる。私が、良質な砂や水を入手できない地域での生コン製造の課題解決に取り組んだのも、そんな強い思いからだ。生コン製造に限らず、マイクロバブルは環境や工業、農業、水産業、食品、医療など幅広い産業に大きく貢献する可能性も秘めており、異業種から多くの相談を受けている。
また、当社ではみんなでマイクロバブル水でいれたおいしいコーヒーを飲みながら、マイクロバブル水の散水で美しい花を咲かせた敷地内の植物を愛でているが、そうした身近な環境や生活シーンにも潤いをもたらす。そして私の夢は、東南アジアなど水環境の劣悪な国で、マイクロバブルによって有害物質を除去し、安全でおいしい飲料水として供給すること。「年寄りの冷や水」と言われるかもしれないが、いつか必ず実現したい。
これまでさまざまな実験や研究を積み重ねる過程で、その努力が「水泡に帰す」ことは多々あった。しかし、マイクロバブルの可能性の大きさを知った今、私は「水泡に期す」との思いで研究と開発に取り組んでいる。